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昨年(平成29年)末、某王手不動産会が営業社員に対し、違法な裁量労働制を適用し、残業代の一部を支払わなかったとして、厚生労働省が是正勧告を行いました。
また、今年に入り、厚生労働省が裁量労働制の適正化に向けて、裁量労働制を導入している1万3千事業所に対して、自主点検表を送り、報告を求めるよう指示しました。
さらに、現在国会にて、裁量労働制の労働時間について、厚労省が調べたデータに相次いで問題点が発覚している等々、何かと物議を醸す裁量労働制でありますが、裁量労働制には、「専門業型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があります。今回は、企画業務型裁量労働制について、解説いたします。
「企画業務型裁量労働制」とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務を遂行する労働者については、一定の要件もと、実際に労働した労働時間数に関係なく決議された時間、労働したものとみなす制度です。
すなわち、その業務の遂行に必要とされる時間を「8時間」と定めた場合には、1日8時間労働したものとみなされます。その場合には、極端な例ではありますが、企画業務型裁量労働制の要件を満たすかぎり、対象業務に従事する労働者が現実に12時間の労働を行ったとしても、12-8=4時間分の残業代は支払われません。
逆に1日3時間しか労働しなかったとしても、やはり8時間労働したものとみなされ、会社は、所定の8時間分の賃金を支払う必要があります。
企画業務型裁量労働制を有効に実施するための要件は以下の通りです。
① 労働者が対象業務に就くこと
② 労働者が対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働
者であること
③ 労基法38条の4第1~7号の事項を、労使委員会が委員の5分の4以上
の多数により議決すること
④ 上記③の労使委員会決議を届け出ること
⑤ 労働者が個別に同意すること
⑥ 就業規則に企画業務型裁量労働制の定めを置くこと
▶要件①
企画業務型裁量労働制の適用を受けるためには、その労働者が、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析であって、当該業務の遂行手段および時間配分の決定において裁量性の高いホワイトカラー業務に就いていなければなりません。
企画業務型裁量労働制の対象業務として主に想定されるのは、経営企画・人事労務・財務・広報・営業計画・生産企画等に関する計画の策定業務です。
▶要件②
企画業務型裁量労働制の対象労働者は、「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する者」でなければなりません。初めてその対象業務に従事する者につき、企画業務型裁量労働制を適用することはできず、ある程度の職務経験が必要です。
指針によれば、たとえば、4年生大学の新卒者が対象労働者に該当するためには、当該業務につき少なくとも3~5年程度の職務経験を経ることが前提になります。
▶要件③、④
労使委員会の決議という手続的要件が課されています。企画業務型裁量労働制を実施するためには、事業所単位で設置された労使委員会の委員の5分の4以上の多数決議が必要になります。
労使委員会で決議すべき事項は、以下のⅰ~ⅶです。
ⅰ対象業務
ⅱ対象労働者の範囲
ⅲみなし時間数
ⅳ当該業務に従事する労働者の健康・福祉を確保するための措置
ⅴ当該業務に従事する労働者からの苦情処理に関する措置
ⅵ労働者の同意を得るべきこと、同意をしなかった労働者に対し解雇その他
不利益扱いはしてならないこと
ⅶ決議の有効期間
ⅷ上記ⅳ、ⅴ及びⅵの同意に関する裁量労働者ごとの記録を、協定の有効期間
中および有効期間の満了後3年間保存すること
そして、その委員会の決議を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
▶要件⑤
企画業務型の特徴として、その適用につき対象労働者の個別同意が必要となる点があります。企画業務型裁量労働制を民事上有効に実施するためには、労働者の同意が必要になります。
▶要件⑥
企画業務型裁量労働制を労働契約の内容とするために、就業規則、個別の労働契約、労働協約に企画業務型裁量労働制の定めを規定する必要あります。
仮に、従業員に裁量労働制の該当性を争われた場合、裁量労働制の該当要件が細かいため、裁量労働者であることを否定されるケースがあります。この場合、会社は、否定された期間の残業時間分の残業代を、未払賃金として支払わなければなりません。
また、裁量労働制の対象となる従業員は、長時間労働になりやすい傾向にあります。そのため、従業員が、長時間労働が原因で精神疾患等を患った場合、労災対応や慰謝料請求をされる等のトラブルに巻き込まれるケースがあります。
裁量労働制の導入を検討する場合は、まずは裁量労働制の要件を入念に確認し、また、従業員が長時間労働にならないよう健康に十分に配慮した労務管理が重要です。
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