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固定残業代制を考察してみました。

固定残業代制を考察してみました【2022.8更新

今回は、残業代の支払方法の一つである「固定残業代制」について、お伝えさせて頂きます。

固定残業代制とは

「固定残業代制」とは、時間外労働に対する割増賃金を支払う代わりに、毎月、定額の残業代を支払う制度をいいます。

労働基準法は、時間外労働に対して割増賃金を支払うことを義務づけているにとどまり、支払方法について規定をしていません。そのため、法所定の割増賃金に変えて残業代を毎月固定で支払うことも、労働基準法の計算方法による割増賃金額を下回らない限りは適法であるといわれています。

なお、固定残業代を支払えば、それ以上の残業代を支払わなくてよいわけではなく、実際の残業時間が固定残業代に相当する時間を超えるのであれば、その差額の残業代の支払いは必要になります。

固定残業代制の有効要件

近時の最高裁判決等から読み取れる、固定残業代制の要件は、以下の4つです。

① 固定支払の合意の存在

② 通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に相当する部分とが
  明確に区分されていること(明確区分性)

③ 固定残業代が時間外労働の対価として支払われていること(対価要件)

④ 労基法所定の計算方法との差額支払の清算規定の存在及びその実態

① 固定支払の合意の存在

固定残業代制として、一定額の残業代を支払う旨を就業規則や労働契約書に記載し、従業員の合意を得ることが要件になります。

また、1ヵ月あたり何時間分の固定残業代を支払うかという問題がありますが、法令上、時間外労働の上限が原則として1ヶ月当たり45時間となっています。また、45時間を超える固定残業代を無効とした裁判例が存在します。

このような背景事情のもと、固定残業代として支払う残業時間については、45時間以内に設定することが望ましいと考えられます。

② 明確区分性

最高裁判例は、固定残業代制の有効要件として、通常の労働時間に対する賃金と割増賃金が明確に区分できることを要求しています。

これは、両者を明確に区分できなければ、割増賃金相当部分が法定額を満たすか否かを判断することできず、長時間労働の抑制を趣旨とする労基法の規制を潜脱することになるためです。

そこで、明確区分性の要件を充足させるためには、固定残業代を基本給に組み入れるのではなく、独立した手当とした上で、かつ手当の全額が固定残業代であるとするのが適切です。

③ 対価性要件

対価性要件とは、固定残業代が、時間外労働に対する対価であることを明確にする必要があります。

例えば、「営業手当」という名称で固定残業代を設定する場合、営業手当には、営業手当としての本来の趣旨も含まれるため、時間外労働に対する対価であることが明確でないとし、対価性の要件を満たさない可能性があります。

従って、固定残業代を設定する場合の手当の名称は、「固定残業手当」等とし、時間外労働に対する対価であることを明確にする必要があります。

④ 差額支払の清算規定の存在及び実態

固定残業代制は、労基法に定める計算方法による割増賃金を支払う代わりに、一定額の残業代を支払う制度ですので、固定残業手当が、実際の計算による割増賃金額を下回る場合に、その差額を支払うのは当然です。

労働時間を把握せず、差額の計算すらしていないと、そもそも割増賃金支払いの意思があったのかという点に疑義が生じ、固定残業代制が否定される可能性があります。

したがって、固定残業代制を採用する場合には、就業規則等において、差額支払の合意に関する規定は確認的に入れておき、実態として差額を支払うことが適切です。

また、必然的にタイムカード等で従業員の労働時間の管理をすることがが不可欠となります。

最後に

「固定残業代制」のメリットとして、
・給与条件を高く見せることができる
・残業単価を低く抑えられる
・給与計算の簡略化ができる。
などがあげられます。

一方で、会社によっては、固定残業代を上回る時間外労働が発生しても差額分を支給していない場合や、固定残業代を導入することで従業員の長時間労働を助長するという側面もあります。

このような背景事業のもと、固定残業代制の有効性について厳しい司法判断が続いています。

従業員から未払い残業代請求をされ、固定残業代制が否定された場合は、固定残業代相当額が割増賃金の算定基礎に組み入れられた上で、割増賃金を全額支払わなければならないという負担を強いられます。

このようなリスクを回避するために、固定残業代制を適切な形で運用することが実務上重要になってきます。

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